ビー・ナチュラル株式会社 代表取締役(元バンダイネットワークス(株)代表取締役)林俊樹氏第2回「モバイルコンテンツ事業への参入」(全4回)

By admin • 10月 31st, 2009

今や世代を超えて定着しているモバイルツール。それを支えるコンテンツ産業のうちで、欠かせない一つの要素として、ゲームをはじめとするエンタテインメントがある。今回の「次代に伝えるブログ」では、モバイル市場の創成期に1コンテンツで会員数400万、会社売上年間80億円以上をたたき出したバンダイネットワークス㈱を設立し、初期代表取締役を勤め、現在はモバイルコンテンツ開発から自社商品販売、また商品開発などのコンサルティングを手がけるビー・ナチュラル株式会社の代表取締役である林 俊樹氏に、モバイルコンテンツ黎明期から現在に至るまでのさまざまなエピソードを語ってもらった。

第2回 「モバイルコンテンツ事業への参入」
商社マンとして社会にデビューしたものの、元来モノづくりが好きで企画開発に携わりたいと考えていた林は、まだモバイル事業への展開を始める前のバンダイに入社し、企画開発マンとしての仕事を始めた。
アイデアを出す訓練を積み、企画力を高めていった林が、モバイル事業へと突入していったのはどんな経緯があったのだろうか。

「実際モバイル事業のビジネスに対して私が予見できていたのか、というところですが、実際はほぼ全部できていないといっても過言ではありません(笑)。また、当時のバンダイネットワークスは、発足当初はバンダイのネットワーク事業部というもののまだ前身であり、実際はピピンと言う商品・事業の撤退処理を行う部門でした。お客様のクレームに対して、24時間365日謝るような仕事だったわけです。とはいえ、そんなことばかりをしていると社員のモチベーションが落ちてしまい、社員が会社に来なくなってしまうので、それを避けるためには何か前向きなことをしなくてはならないと思い、いろいろと前向きなアイデアで営業をかけたのです。ハッパもかなりかけましたね。『3年後に上場するぞ!』と。今から考えればよくそんな(ウソ)ことが言えたなと思うのですが(笑)、その営業先にたまたまNTTドコモさんがいたのですね。」

赤字事業の撤退部門を任され、その苦しい状況の中で社員のモチベーションを上げる為にもと営業した先が、当時i-modeをしかけようと開発中のドコモだった、という運命のめぐり合わせで、林はモバイル業界へと足を踏み入れることになる。

「当時最初にドコモさんに営業したのは、ハンドヘルドゲーム機『ワンダースワン』のネットワーク利用の話でした。ゲームウォッチを発明した横井軍平さん(故人)が開発された『ワンダースワン』という携帯ゲーム機をバンダイが扱っており、そのゲーム機を携帯電話と繋いでネットワーク端末として利用し、ネットブラウジングもメールもできる、という提案でした。
当時のドコモさんではまだi-modeも試作機段階だったのですが、そのとき話を受けてくれたのがi-mode開発者の一人である榎さん、夏野さん、松永さんでした。
営業に行った私に彼らは『営業先を間違えている。同社では既に携帯の端末でネットワークゲームなどができるものを開発しているのだから、このゲーム機の外付けの話は他の部署を紹介する』といわれました。ちなみに、当時のi-modeは白黒4階調しかなく、全エンターテインメントゲーム業界から参画を断られたそうです(笑)。ただその話しの中で『公式サイトは課金をしてもらえる』という話しに希望を見出して私は飛びつき、『コンテンツを考えて参加します』と言ってしまったのです。予見も何もないですね(笑)。

その後i-modeで展開し大成功した『いつでもキャラっぱ!(i-mode最大の会員数を誇る待ち受け画面配信サービス)』に関しても、当時事業部長だった私は『白黒での待ち受け画面のものなど売ないのでは』と、間違った判断をしたり、いざやるとなったら今度は100円で課金するという提案に関して『200円で売れないだろうか』などと、全くのミスリードをしていた始末です(笑)。

ただ唯一、私の仕事で美点があったとすれば『やろうとする方針』が根底にあって、自分の考えと違っても、『これが失敗したらいくらかかるのか』という損害の試算分析をして『ああ、それなら他の黒字でカバーできるから常務に謝まれるな』(笑)というジャッジを下したくらいでしょうか。
また、コンテンツ決定の会議においては、前提として『やる風土』を作り、各部門の合議制をしき、最大のリスクをカウントし、それを親会社と調整する、そういったリスク管理の部分も確実に行って、少しは貢献できたのではないかなと思います。」

開発者・企画者としてはミスリードの連続だったと謙遜して語る林だが、実際にサラリーマンとして働く以上、プロジェクトをどう会社内で説得するか、そこがまさに上司の腕の見せ所ではないかと思う。その意味では林はプロジェクトを推進する上で大きな役割を果たしたことは間違いない。

「余談になってしまいますが、大手コンピューターメーカーが外部から鳴り物入りで開発者を招聘し、開発チームを組んで最終的に役員プレゼンまでいった後に『リスクがあるからやめろ』といって立ち消えになるプロジェクトが往々にしてある、そんな笑えない話をよく聞きました。リスクが多い少ないという議論ではなく、リスクがあるからやめる、というのでは、最初からやる必要はないですよね。当時私がマネジメントを任されていた部分でよかった点を上げれば『やめろ』といわなかったことでしょうか。」

赤字撤退部門として切り離された子会社をサラリーマン社長として任された彼が、時代を牽引するモバイルコンテンツ業界に旋風を巻き起こすきっかけになったのは時代の背景もさることながら、彼の行動力とやはり企画・開発のときに学んだ「アイデア」への嗅覚が大きく影響していたのであろう。

軽快な口調で自らのエピソードを語る林だが、そこにかかるプレッシャーは相当のものがあったに違いない。次回はその輝かしい業績の影にあったサラリーマンとしての苦しいエピソードなども触れてみたいと思う。

(つづく)

VN:F [1.8.7_1070]
この記事に評価をお願いします。
Rating: 10.0/10 (1 vote cast)
VN:F [1.8.7_1070]
Rating: +1 (from 1 vote)
ビー・ナチュラル株式会社 代表取締役(元バンダイネットワークス(株)代表取締役)林俊樹氏第2回「モバイルコンテンツ事業への参入」(全4回)10.0101
 

Leave a Comment

You must be logged in to post a comment.

« 「第3回せんだい・みやぎオータムセミナー2009」講演報告 | Home | 第十七回『次代の会』開催のご案内 »