アルファグループ株式会社 代表取締役社長 上 岳史氏 第3回「運と努力とコンプレックス」(全4回)
企業活動を行う上での生命線は業界・時代を問わずに、「営業力」であることはいわずもがなである。その形態はさまざまであるが、モバイル事業、オフィスサプライ事業、ウェブマーケティング事業、人材事業などの「営業」に特化した事業展開で、日本初の「営業商社」を目指すアルファグループ。
今回の次代の会 講演ブログは、大学在学中の1994年にグループの前身となる株式会社プラスアルファを設立し、その後事業拡大とともに組織改変をしながらアルファグループ株式会社を設立、2004年には同社をJASDAQ市場へ上場させ、現在に至るまでに関連会社含め4社のホールディング制をとりながら成長を続けている同社の代表取締役社長 上 岳史氏の軌跡を辿ってみたいと思う。

アルファグループ株式会社 代表取締役社長 上 岳史氏
第3回「運と努力とコンプレックス」
1994年の創業以来順調な成長を続け、2004年にはJASDAQ上場を果たしたアルファグループが、昨年まで共同創業者であり現取締役会長の吉岡伸一郎氏との二人代表制を敷いてきたことは前回少し触れた。日本ではあまり馴染みのない、二人代表による共同経営体制でのメリット、デメリットを語ってもらった。
「メリットは同等の立場で相談できる相手が居るので一人で悩まずにすむこと、デメリットは責任を分担してしまうので会社を背負いきれないところです。細かくいえばいろいろありますが、いいきるとするとそういったところでしょうか。
上場したときに、大学の先輩である株式会社毎日コムネットの代表取締役専務の原利典さんにご挨拶させて頂いたんです。その際『上君知ってるかい?日本の上場企業で二人代表制をとっているところは、うちと君のところ2社しかない。二人代表制を長くとっていると失敗するかもしれないよ』というアドバイスを頂いたのです。当時アメリカでは意思決定のスピードを高めるために二人代表制を積極的に導入し、結果失敗する事例が相次いだ、と耳にされたそうなんですね。
当時を振り返って私なりに解釈をすると、創業時は勢い・スピードが求められるフェーズです。そうした時期には二人代表制のメリットが最大限活かせるでしょう。ある一定規模に成長したフェーズでは、事業の複雑さや関わる人々の関係性を踏まえ一人代表制が適している、ということだと思います。
私と会長の吉岡は得意分野が違ったので、それぞれの領域を分担していました。しかし事業が広がり複雑になるにつれ最終決定の判断が非常に難しくなってきまして、体制を変えようということになりました。吉岡と私と、どちらが代表をやったほうより会社の為になるのか、市況や事業内容等、様々な要素を検討し尽くして私の一人代表制に移行しました。」
企業経営は生き物のように変化を繰り返し成長を続けていくものだ。
上場を果たして5年、昨年から一人代表制に移行したことは、同社にとっても上氏にとっても新しいステージへの挑戦なのだと感じる。新体制へ移行後の同社がどのような変化を遂げるのか、非常に興味深いところである。
さて、そんな上氏は、つい先日MBA(経営学修士)を取得している。同社を順調に成長させてきた経験があるにも関わらず、MBAを取得したのはなぜなのだろうか。
「私が持ち続けた『コンプレックス』ゆえですね。学生時代に起業し、ビジネスについてろくに学ぶ時間もない状態でがむしゃらに仕事に取り組んできました。そしていざ上場を果たしてみると、会社や私を取り巻く環境が激変した。いわゆる『ビジネスエリート』がたくさん現れ、様々な提案を受けるのですが、この話が全く分からないのです。他の上場企業の社長も同様です。横文字だらけ、知らない言葉だらけでしてね(笑)。
こちらは『どこの国に来てしまったのか』というような状態なのに彼らは私を持ち上げるので、わからないことが聞くに聞けない(笑)。超一流とはこういう人たちなのかと、コンプレックスを抱えてしまいました。彼らが『こうしたら儲かりますよ』というアドバイスをくれるのですが、『儲かりたいために仕事をしているんじゃないんだけどなあ』など思っていても言い返せない自分がいる。悔しくて仕方ない、そんな自分もまたコンプレックスでしたね。
そこで、いっそ取得しよう、と勉強を始めましたのですが、これが時間的な負担が大きかった。平日は3日、1日3時間の勉強時間を確保し、土曜日は終日学校に出席。日曜日は宿題をこなして、正月も論文書くような生活でした。」
本業をこなしながらそれだけの時間を費やして晴れてMBAを取得した氏に、その効果を聞いてみた。
「効果ですか?そうですね、MBAホルダーと聞いても驚かなくなったかな(笑)。日本国内でのMBA取得はそれほど凄いことではないと実感しましたし、上場企業の社長に対してもさほど動じなくなりました。
上場企業の社長とは何だと思いますか?知人の上場企業の社長とこうした議論をする時、きまって『たまたまいろいろな条件が重なり、運がよかったから上場できたんだよね』という話がでます。
上場企業の社長さんの殆どは、前職から同じ仕事をやっている方なのだそうです。前職どころか仕事の経験がない、学生時代から起業した社長が少ないのは当たり前で、私は本当に運によるところが多いと思います。ただ、どんな経歴の方でも共通していえることは、皆さん死ぬほど努力されているということです。」
この会で講演される経営者の殆どが成功の条件として口にする「運」。氏の場合はそれだけに甘んじることなく、自らのコンプレックスをもバネにして「努力」を惜しまずに結果を追い求めたことによって、上場を果たし、MBAを取得し、その後も成長を続けているのだろう。これも前回までの氏の軌跡通り、その姿勢に人はついてくるのだろうと感じる。
次回は最終回。氏の社員に対する考え方や社内交流、また同社にかける想いに触れて締めくくりたいと思う。
(最終回に続く)
敬称略 取材・執筆 柳澤史樹
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