ジョルダン株式会社 代表取締役社長 佐藤俊和氏 第1回「起業10年後の決意」(全4回)
インターネットの技術開発によるサービスの中には、ユーザのライフスタイルを変えるものが数多くある。今回の次代の会 講演ブログは、ビジネスマンのライフスタイルを変えたといわれるソフト「乗換案内」を開発したジョルダン株式会社 代表取締役社長の佐藤俊和氏に、インターネット黎明期からの同社の歩みとこれからについて語ってもらうことにしよう。

ジョルダン株式会社 代表取締役社長 佐藤俊和氏
第1回「起業10年後の決意」
佐藤氏は昭和24年福島県出身。東京大学から同大工学部大学院を卒業後、先輩が入社したエス・ジー株式会社に入社。特に目標を定めずにいた氏にとって当時強い興味を覚えたプログラムを生業にしてみようとその道を歩きはじめたという。
「その会社は20名ほどの会社でしたが、ベンチャーの時代だと叫ばれていた時代でもあり、好きなプログラムをできるということで入社しました。
各社の部品を組み合わせ、市場の半額のコストでオフィスコンピューターを作ったほどの高い技術力があり、仕事ではそれなりに稼ぐことができたのですが、そのうち自分のモチベーションが落ちてくるのに耐えられなくなり『それなら自分達で作ろう 会社の看板があったほうが仕事をしやすいから』というくらいの軽い気持ちでジョルダン株式会社(当時は㈱ジョルダン情報サービス)を設立したのが最初ですね。」
時代を象徴するようなインターネットサービスを仕掛けた会社にしては極めて静かな発進だったようだが、ネットの黎明期に誕生した会社の中には、同社のように技術者が友人と始めた起業のケースが珍しくない。
「もともとものづくりが好きな人間であり、集団でした。特に営業が得意な人間がいるわけではなかったのですが、当時は圧倒的な人不足だったこともあり、贅沢をいわなければ仕事は結構入ってきたのです。受託サービスの研究用プロジェクト要員のような会社ですね。
そんな開発を重ねている中で直接お客さんに依頼された案件などがポツポツ出始めたのを受けていくうちにそれが増えてきた、そんな始まりでした。
その流れのなかで仕事をこなしてきましたが、新しいものづくりがとにかく好きで、お金のことは全く駄目なんですね。ジョルダンをつくったときの仕事で300万で「ムーンクレスタ」や800万で「クレイジークライマー」といったゲームソフトを開発したのですが、その頃にちゃんとしたライセンス契約などの知識があれば、ビルが建っていたとよく言われます(笑)。その他にも世界的に英会話教育を展開しているブリタニカの仕事を依頼され、全ての英会話ソフトの開発をしたりもしました。
そんなふうに約10年、楽しくやってはきたのですが10年たっていきなり虚しさというか、何かを生み出したいという思いが強くなり、方向性を変える意味で社名を『ジョルダン株式会社』と変更して、自分たちの開発した商品を世の中に出したいと思い作られたものが『東京乗換案内 for windows 3.1』だったのですね。
この頃ちょうどIBMのDOSVマシーンが登場、普及し始めた時代でもあったわけですが、さすがにこのときにはビジネスも考慮し、開発した製品を一本いくらで契約するという形式をとりました。これが結果的にかなり大きな決断で、この決断をしなければ今はなかったといっても過言ではありません。まあとはいえ初日の注文が1本だったというのは覚えています(笑)。
その後課題としてやりたかった新幹線から特急、飛行機までの時刻表を実装したことにより商品力は非常に強くなりました。
1999年にはPC版に全国全駅の時刻表を実装した時刻表対応版を出しましたが、最初はいろんな人に『バカか』といわれました。『山手線なんて待ってればくるじゃないか』ということですね(笑)。ただそのころには携帯のサービスも始まるし、可能性に関して面白さも感じていたところでしたので、あくまでも自分を信じてがんばりました。
あまり経営哲学的なことをいうつもりはありませんが、しいて言えば『人のいうことは気にしない』ということがこの当時学んだことでしょうか(笑)。」
優秀な技術者であった佐藤氏は、時代の大きなうねりに図らずも乗るかたちで起業したわけだが、10年が経ったときに、自らの作品として残せるものを世に問いたいという思いが強くなり、メンバーと開発したソフト「乗換案内」が、同社を一躍大きなステージへと駆け上がる原動力となる。
乗換案内の開発を続けていくなかでさらに新しい波として到来した携帯電話の出現はどのように同社のそれからを変えたのか。次回も時代の大波に乗った氏の物語をさらに追いかけてみたい。
(第2回目に続く)
敬称略 取材・執筆 次代の会 柳澤 史樹
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