特別講座 わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生 第1回「がんという病気について」(全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 7月 3rd, 2010

健康であることは、経営者に関わらず社会生活を営む上での最低限の条件である。ただその重要性を理解しているにも関わらず、現状では特定検診、がん健診の受診率は4割を切っておりリスクヘッジが行動に至っていないのが現実ではないだろうか。

今回の次代の会は、特別講座として「健康」をテーマに、現役の医師に語って頂く企画を初めて展開した。がん治療の最前線で戦い、現在は「わかすぎファミリークリニック」院長として年間2000例近くの患者を診察している医師 若杉慎司先生に、健康な社会生活を送る秘訣を具体的に教えて頂こうと思う。

 第1回「がんという病気について」

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わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生

若杉慎司先生は福島県福島市出身。新潟大学卒業後、東京女子医大で胃がん研究のチームに所属し、東京大学医科学研究所他でがん遺伝子治療、がん免疫治療の研究と平行して大学病院、関連病院で消化器疾患と癌の手術、治療に従事。またJICAの専門家健康管理室で嘱託医として世界各国での健康診断、健康相談、医療事情視察を担当したという。

がんとの闘いに明けくれた後に世界に出向いた理由を伺ったところ「シュバイツアーに憧れて、海外の貧しい人々を救いたかった」という熱血漢である。帰国後、ご自身でクリニックを開業された後は、それまでの経験と実績を活かして、がんの早期診断、メタボリック・シンドローム対策を念頭に人間ドック、禁煙指導、講演活動に力を入れている。そんな先生が講演の開始時に開口一番口にしたコメントは、私の予想に反し「医者の言葉にオリジナルはない」という内容のものだった。どういう意味なのだろうか。

「今日の私を含め医者がお話しする内容は、学会等で入手した情報を私がインターフェイスとなってお伝えするものです。これらの情報は検証、証明するのに非常に多くの時間と手間がかかっており、その意味では信憑性の高いものです。これがEvidence Based Medicine(EBM)に乗っ取った医療です。今日お話しする内容は若い経営者の方に対する生活習慣病への基礎知識と概論になりますが、確かな証拠に基づいたものです。できるだけ具体的にお話ししますので、皆さんの健康維持にぜひ役立てて頂きたいと思います。

考えてみれば当たり前の話だが、人の命を預かる医師の情報に関しては、個人一人の力ではなく、非常に多くの手間をかけて立証されたものであることは当然であろう。そこで気がついたのだが、ある意味耳慣れた感のある「がん」「メタボリック」「生活習慣病」などの言葉だが、実はその内容に関しては世間で耳にするほど詳しく知らないのが一般的ではないだろうか。どんな話が聞けるのか興味深くなってきた。

★年間20万人の病死者、原因の7割はこの3つの病気

先生はまず大きく「3:3:1」と書かれたページを見せた。
「この数字は、疾患別の人間のおおよその死亡率で、それぞれ「がん」「メタボからくる動脈硬化疾患」そして「肺炎」です。病気で亡くなる方の7割の方がこの割合で亡くなっているのです。今日はこの3つの疾患に関する情報を順にお話させて頂きます。」

実に7割の人がこれら3つの疾患で亡くなっているという事実を、ここで既に知らなかったことに驚きを覚えた。のっけから衝撃的である。ではそれぞれ実際にはどれくらいの数になるのだろうか。

★人類の約半数はがんにかかる!? 
「現在いろいろながんで年間33万人の方が亡くなっております。交通事故が年に約5000名であると考えると、どれだけ多いかご理解いただけるかと思いますが、実に男性の5割、女性は4割弱ががんにかかるという統計が出ているほどかかりやすい病気であるといえます。また、先程の死亡率3割と比べ2割多いのですが、その差分の2割は治療して治っているということなのですね。」

★部位によってこれだけ異なる「5年生存率」

まず驚かされたのは、実に「男女問わず人類の半分ちかくががんにかかる」ということ、そしてそれが原因で亡くなる方が20万人もいるという事実。改めてがんは特別な病気ではないのだと改めて感じる。しかし次に先生は、私のなかでそれまでひとくくりに捉えていた「がん」という病気が、その種類によって大きく違うものであるという新たな事実を「5年生存率」という言葉と、「がんによる死亡者の統計」で説明してくれた。

「これはがんが発症した患者さんが、5年後にまだ生き残っているというデータ(5年生存率)ですが、胃がん、大腸がんが7~8割なのに対し、肺がんは実に2~3割、対して乳がんは8~9割ということです。ひとくちにがんといっても、これだけ違うのですね。これは肺がんにかかる人の8割が喫煙者であることで、発症した時点で肺自体が弱ってしまっていて、切除することができないケースが多いことと、通常の健診では胸部CTがない為に発見が遅れてしまうことがあるのが大きな理由なのです。

 またがんはご存じのとおりいろいろなところに出きますが、死亡者数から見るに現在の統計では、1位が肺がんの7万人、以下続いて胃の5万人、大腸4万人、肝臓3万人、前立腺1万人というデータが出ています。それぞれの増加率ですが、男性の場合喫煙率が下がっているので、将来的には大腸がんが肺がんを追い抜くであろうと予測されるのに対し、女性の場合は肺がんの死亡者が将来的に大腸がんを超えるであろうと推測されています。女性の喫煙率が年々あがる傾向になるのですね。たばこのマーケティングは昨今明らかに若い女性を対象にして行われていることからも、この傾向は推測できるものです。」

★発見と予防の重要性

私事で恐縮だが、20年以上喫煙をしていた私が、先生にお会いしてこれらの話を聞くようになり、その恐ろしさに禁煙を意識し始めた頃、古い地元の友人が肺がんで亡くなった。調子が悪く、頭が痛いという彼が精密検査に行ったときには、既に肺からがんが脳の3か所に転移し、手の施しようがない状態だったという。彼はその検査をしてがんが発見されてからたった7カ月で帰らぬ人となってしまった。享年40。
ニュースを聞いたその日から禁煙をしている。不思議とまったくといっていいほど禁断症状はないのは、彼の命を奪ったがんへの思いがあるからとしか説明のしようがない。もし友人にこの話を早く伝えてあげることができたら、あるいは彼の命を救うことができたのではないかという思いが頭をよぎる。

 先生が以前にその身をおいたがん医療の最前線では、3人に一人は手術で完治することが難しい症例の患者さんだったという。治療もむなしく多くの死亡者、闘病患者を間近で見てきた先生が、その戦いの場所を、手術台の上から「予防」という観点へ移し、このようなセミナーに積極的に協力頂いている理由が私にもちょっとだけ理解できた気がする。
ではその憎きがんは、具体的にどのようにして発見することができるのだろうか。

 「それぞれ肺がんは胸部CT、胃がんは胃カメラ、大腸がんは検便、肝臓がんは肝炎のチェック、前立腺は50代後半で行われるPSA(前立腺マーカー)というもので調べて頂ければと発見できます。基本1年間に1度の人間ドック受診でほとんどクリアできるものです。」

 先生曰く、それぞれのがんを発見するための方法は日々進化しており、早期に発見することによって対処ができるようになっている現代社会において、決して不治の病ではないということだった。
次回は引き続きがんをテーマに、その発見手法と予防に関してもう少し詳しく解説して頂こうと思う。 

(第2回に続く)

敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

わかすぎファミリークリニック
公式サイト URL:  http://www.clinita.com/
人間ドック専用サイト URL:http://www.e-dock.jp/
若杉先生によるブログ「人間ドックのなるほど活用術」 http://wakasugi.weblogs.jp/ 

 

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