特別講座 わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生 第2回「3大がんの予防と早期発見」全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 7月 9th, 2010

健康であることは、経営者であるなしに関わらず重要なのは言うまでもない。
しかし、重要性を理解しているにも関わらず忙しいなどの理由で、特定検診、がん健診の受診率は4割を切っており、リスクヘッジが行動に至っていないのが現実ではないだろうか。
今回の次代の会は、特別講座として「健康」をテーマに、現役の医師に語って頂く企画を初めて展開した。
がん治療の最前線で戦い、現在は「わかすぎファミリークリニック」院長として年間2000例近くの健康診断、人間ドックを担当している医師 若杉慎司先生に、健康な社会生活を送る秘訣を具体的に教えて頂こうと思う。

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わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生

第2回「3大がんの予防と早期発見」

がん医療の最前線で戦っていた若杉医師は、その戦いを「予防」という視点から進めていくべく自らクリニックを開設、人間ドックを中心に講演などにも積極的にその活動の場を拡げている。今回は年間100万人の病死者の3割、33万人といわれる「がん」の早期発見方法に関してもう少し掘り下げて語って頂こう。

「現在日本ではがんで年間に33万人強の人が亡くなっています。がんは命に関わる病ではありますが、医学の進歩によって多くの方が完治しているのも事実です。がんの悪性度を図る指標として『5年生存率』があります。これはがんを発症してから5年後に生存している患者さんの割合で、そのがんの治りやすさがわかります。割合が高いがんは治りやすく、低いがんは治りにくいといえます。

それによると、胃がんや大腸がんが7~8割と高いのに対し肺がんでは2~3割にとどまっており、肺がんがいかに治りにくいかが分かります。昨今の禁煙ブームにより、男性では肺がん死亡数の上昇率がややにぶっていますが、女性の喫煙率が上がると同時に肺がん死亡数は急速に上昇しています。近い将来、女性の死因の1位は将来肺がんになるであろうと推測されています。

このように実際はひとくちに『がん』といっても悪性度はそれぞれ異なり、疾患の特徴に応じて早期診断を目指す為には、1年に1回の人間ドックなどでのチェックが有効です。」

 中年期になってから「人間ドック」の受診に関する情報を聞くこともあったが、通常の健康診断と比べて何がどう違うのか、またドックの健診内容やその価格に関しても詳しく知ろうということもなかった。普段の生活に大きな支障がない場合、いかにその健康の重要性を感じないものなのかを痛感する。そこで前回まとめてお話し頂いたなかから、肺・大腸・胃の3大がんの検査内容に関して詳しく語ってもらった。

★愛する家族にも忍び寄る肺がんの恐怖

「まず肺がんですが、結論から申し上げると、完治を目指せる内に診断するのには胸部CTが必要です。対象者となるのは喫煙者の方はもちろんですが、受動喫煙者となる方も受けて頂いたほうがよいですね。女性の年間肺がん死亡者が現在約2万人ですが、その死亡者の半数近くは旦那さんの喫煙による受動喫煙による被害というデータが出ています。恐ろしいことですね。喫煙に関してはご存知かと思いますが、多くの病気の発症率を飛躍的にあげてしまう百害のもとになるものです。喫煙に関しての問題点は別に時間をとってお話します。

肺がん検診で受ける胸部レントゲンですが、実は肺がんが3センチ以上にならないと発見できず、その時点で発見された場合、既に根治手術をすることができない状況ということが7割に上ります。またレントゲンではがんが心臓や骨の陰に隠れて発見できないということもあるのです。

対して胸部CTの場合はがんの大きさが1センチの時点で発見することができますので、喫煙を20年以上続けていらっしゃる方はできればこの胸部CTは受けて頂いたほうがよいかと思います。なお、長年喫煙されている方は大抵の場合慢性気管支炎などかかっていることが多く、咳やしつこい痰等の症状があります。その場合であれば健康保険の適用で7000円程度で受けることができます。

★将来の死因1位大本命 大腸がんは「検便」で予防!?

男性において急増している大腸がん。現在のところ、がん検診で最も重要な検査は、年1回の検便(便潜血検査)でポリープ、がんの存在をチェックすることと言えるでしょう。大腸がんの原因となるポリープは、50代以上で3割の方にできます。3ミリから5ミリになると便に血が混ざるので、それを検便で検出し早期発見を目指すのです。

ポリープは3年から5年以上で10ミリに成長し、ほぼ全例ががん化するといわれています。早期発見した場合は開腹せずカメラで見ながら切除する手術で治療でき、入院期間も1泊から3泊という短期間で済むのです。予防に関しては肉食、飲酒を制限し、繊維質を多く採ることが重要です。運動も有効な予防策となります。」 

★ピロリ菌除菌と胃カメラで胃がんはもう怖くない!

これまで長年に渡りがん死亡の第一位を占めていた胃がん。

最近の話題としては、ヘリコバクター・ピロリ菌、通称ピロリ菌の保菌者の方が胃がんにかかる確率が非保菌者より5倍高いことがわかりました。ヘリコバクターの存在は尿・血液・胃粘膜細胞の検査で調べることができます。ちなみにピロリ菌保菌者で喫煙者の方は、胃がんにかかる確率は11倍になるというデータがあります。

ピロリ菌に関してですが、日本では50歳以上の8割が保菌者というデータがあり、これはくみ取り式の便所と井戸があった時代の影響であるといわれています。一旦除菌をすると再度感染するということがないので、潰瘍の既往があったり比較的重い胃炎をお持ちの方は除菌治療を受けることをお勧めします。これは1週間3種類の薬を服用するのですが、潰瘍などがある場合は保険適用されますし、自費でも7000円程度で済みます。

上記ピロリ菌の除菌と、年に1回の胃カメラでのチェックで、胃がんによる死亡は殆ど予防することができると断言してもよいかと思います。 胃カメラですが、バリウムの場合は小さな病変が見づらいこと、またげっぷを我慢しなければならない為苦しく、失敗してしまうことが多いことなどが欠点として挙げられます。さらに、喉から入れる胃カメラですが精神的な緊張やおう吐反応で苦しいといった声も多く、それらは医師の技術により大きく左右されます。

私のクリニックでは、まだ導入率が1割前後の『鼻から入れる苦しくない胃カメラ』を導入し、私自身が直接カメラを操作して検査を行います。患者さん皆さんは苦しまずにご自身の胃の中をモニターで見て頂きながらお話しを聞いて頂けます。」

 3大がんの検査内容と予防に関するお話は、それぞれ具体的な数値に基づいているだけに説得力がある。また以前「がん」の代名詞のように言われていた「胃がん」が現在ではそれほど恐ろしい病気ではなくなってきているということも新しい事実であった。

ただ先生曰く、いまだ胃がんに対する情報が先行しており、実際は増加傾向にある大腸がんの検査である検便をいらない、という患者さんも多いとのことだが、私自身も大腸がんが増えているという事実、また検便でチェックできるということすら知らなかった。いかに最新の予防医療に対して世間一般の知識レベルが乏しいものかを痛感させられる。その他のがんに関しても基本的な人間ドックの内容で網羅できるとのことなので、やはり30代、40代になって一度は人間ドックの受診を検討するのは、自らの安心の為にも必要なのだと思わざるを得ない。

さて、次回はテーマを「メタボリックシンドローム」に変え、同じく死因の3割を占めるという血管性疾患の検査及び予防方法に関して語って頂こうと思う。

(第3回に続く)

敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

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