特別講座 わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生 第3回「メタボリックシンドロームの恐ろしさ」(全4回)
健康であることは、経営者であるなしに関わらず重要なのは言うまでもない。しかし、重要性を理解しているにも関わらず忙しいなどの理由で、特定検診、がん健診の受診率は4割を切っておりリスクヘッジが行動に至っていないのが現実ではないだろうか。今回の次代の会は、特別講座として「健康」をテーマに、現役の医師に語って頂く企画を初めて展開した。がん治療の最前線で戦い、現在は「わかすぎファミリークリニック」院長として年間2000例近くの健康診断、人間ドックを担当している医師 若杉慎司先生に、健康な社会生活を送る秘訣を具体的に教えて頂こうと思う。

わかすぎファミリークリニック院長 若杉慎司先生
第3回「メタボリックシンドロームの恐ろしさ」
前回まで2回に渡って、年間100万人といわれる病死者の3割を占める「癌」に関しての基礎知識と予防のための検査に関して先生に語って頂いたが、今回は同じく死因の3割を占めるといわれる「脳梗塞」や「心筋梗塞」に代表される「血管性疾患」にフォーカスを当ててお話しを伺うことにした。「血管性疾患」とは、巷では定着した感のある「メタボリックシンドローム」に代表される、コレステロール値やドロドロ血によって血管内が詰まってしまうことにより起きる疾患のことである。
★その基準について
ここで参考までに「メタボリックシンドローム」に関して説明しておこう。メタボリックシンドロームとは、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会など8つの学会が2005年に統一見解としてまとめた血管性疾患の概念である。その基準値は必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方センチ以上)のマーカーとして腹囲が男性85センチ、女性は90センチであることを必須条件とし、さらに ①血圧が130/85以上 ②中性脂肪150以上 ③HDL(善玉コレステロール)40未満 ④空腹時血糖110以上 のうちから2つ以上該当した場合に「メタボリックシンドローム」と診断されるとのことだそうだ。
通常の生活では腹囲以外の数値に関してあまり日常生活で知る機会がないうえに「メタボメタボ」と聞きなれている言葉だけにへんに耳慣れしてしまっている感がある。そこで先生にメタボリックによる健康被害の事例を挙げてもらった。
★働き盛りを襲うメタボリックシンドロームの若年齢化
「血管性疾患は30代~40代の若い方々が発症するケースが増えているのが特徴的です。有名人でいえばタレントの松村邦洋さんがマラソン中に急性心筋梗塞による心室細動で、非常に危険な状態になった事件がありました。一時は心肺停止の状況にまでなってしまったそうです。通常であれば助からないケースがほとんどなのですが、たまたまマラソンに出場していて、ランナードクターが並走していた為、症状が発症した際にすぐ対処できたのが大きかったのですね。彼は41歳ですが、以前は50~60代の病気といわれたものです。他の例では巨人軍の木村拓也コーチが試合前にくも膜下出血で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。享年37歳。彼はメタボリックシンドロームにプラスしてタバコを吸われていたということで、非常に残念な結果になってしまいました。この例でもわかるように、運動選手であっても喫煙の習慣がある方にはいろいろな疾患のリスクが高いといえます。
もう何度耳にしただろうか。「運動不足と規則正しい生活」という言葉を。タバコはともかく実際によほどの意志ときっかけがなければ運動をするのはやはり大変なことだし、相変わらず巷では自虐的に「メタボ」を自認したまま変わろうとしない人が多いのも事実だ。また「病気」と自覚しにくい意識も変わらない原因の一つである。自分のことも含め人間はいかにその被害を自らのものとして感じないと動かない生き物であると痛感させられる。ただ発症してしまった場合、多くのケースにおいて多くの人を死に至らしめてきた恐ろしい病気であることをしっかりと自覚しなくてはならなくなっている。これは次代の会に集う若い経営者の方々の年齢を考えた際に、がんよりも気をつけなくてはならない病気なのだ。
ショッキングな映像ではあるが、これが現実であると認識し、あえて警鐘を鳴らす意味も含め、木村コーチが倒れた瞬間の映像を掲載させて頂く。
★メタボリックシンドロームを 防ぐために
ではその「メタボリック・シンドローム」を防ぐ心がけを先生にお伺いした。
「特にIT関係の会社の方が多く私のクリニックに見えますが、若い方で本当に多くの方がメタボになっていますね。朝10時くらいから出社し11時くらいまで会社で殆ど座って仕事されるので無理もないと思いますが、せめて食事の時間だけは気をつけられるとよいかと思います。朝ごはんをしっかり食べ、夕食は12時間後に食べるスタイルが理想的です。朝食が8時なら夕食も8時前後という具合に。朝を食べないと頭が飢餓状態になって昼食のカロリーを全て吸収してしまい、そこだけで200カロリーほどの差が出るといわれていますので、朝食は必ず取られたほうがいいですね。
また、コレステロールに関しては、善玉であるHDLと悪玉といわれるLDLの比率に注目してください。善玉HDLは40以上が望ましいですが、同時に悪玉LDLの数値がHDLの2倍以内に収まる状況が理想的です。HDLが60ならLDLは120以内ということです。これは健康診断でも数値が分かりますので、よく注意してみてください。
では具体的な対処ですが、運動とやはり食事が重要ですね。運動することでHDLを増やすことができるといわれています。具体的には速歩、全速力に近い速度で15分くらい歩いて、心拍数をあげるくらいの運動を毎日行うのが理想的です。よく万歩計でゆっくりと歩数を稼ぐ人がいますが、これは実はあまり効果がないのですね。
さらに悪玉コレステロールを増やしてしまう食事ですが、一番は玉子の黄身、ホルモンなどの内臓系、スイーツにある生クリームやバターなどが悪玉を増やすといわれています。イカやエビは以前はダメだといわれていましたが、最近これは問題ないということが判明しました。逐次このような医学の常識は変わって刷新されているのですね。」
今回はメタボリックシンドロームの恐ろしさ、そして予防の為の食事に関してアドバイスを頂いた。さていよいよ最終回は、死因の1割を占める肺炎に関してのほか、タバコの害やお酒の飲み方、またその他健康を保つための多くの秘訣に関してお話しいただきたいと思う。
(最終回に続く)
敬称略 取材・執筆 柳澤史樹
わかすぎファミリークリニック
公式サイト URL: http://www.clinita.com/
人間ドック専用サイト URL:http://www.e-dock.jp/
若杉先生によるブログ「人間ドックのなるほど活用術」 http://wakasugi.weblogs.jp/
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