元株式会社タカラ 代表取締役社長 佐藤博久氏 最終回「Eコマースとリアルビジネスの連動性」 (全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 8月 20th, 2010

今回次代の会へご登壇頂いたのは、玩具メーカー大手「タカラ」の元代表取締役社長である佐藤博久氏。「チョロQ」や「トランスフォーマー」といったヒット商品を手掛け、同社退任後はデジタルの世界へその舵を切り、現在は投資家、コンサルタント、大学教授といった多種多様なフィールドで活躍されている。そんな氏に講演のテーマとして挙げて頂いたEコマース。その成長度合い、スピード、規模からして、まさに現代における産業革命といえるであろうこのビジネスモデルは、果たしてどのようなものなのか。Eコマースの事例を分析して頂きながら、次代へのメッセージ、ナレッジ&ノウハウをお伝え頂いた。

最終回「Eコマースとリアルビジネスとの連動性」

氏には前回・前々回と「目立たない」なかで「女性による女性のビジネス」で大成功を収めたEコマースの事例を挙げて頂いたが、もともとは玩具メーカー大手タカラの代表であった氏にとって、何をきっかけにしてこのEコマースという世界に携わることになったのだろうか。

「私がタカラからセガからMTIへと、自分のビジネスドメインがそれぞれキャラクター、そして携帯コンテンツという流れで移っていく中で『物流と在庫』がこの業界では関係ない、ということに最も驚きました。『ドロップシッピング』というウェブ上のサービスがありますが、これも物流と在庫を店舗運営者は担う必要がないので、そのリスクに全く関係なくビジネスを展開することができるのです。また、Eコマースの場合は顧客属性も含め顧客管理ができるのですね。私もタカラからものづくりをやってきましたが、物流と在庫、先行投資を考え、資金繰りを考えてというビジネスはつくづく大変だな、と思いましたね。Eコマースにおける販売手法もギャザリング(共同購入)やポイントプログラムなど、いろいろな形で進化してきていますが、いずれにしてもEコマースというビジネスはまだまだチャンスはあるといえます。」 

では全ての人間にチャンスがあるのか、というと話はそこまで甘くない。そこには女性が女性に向けたビジネスを展開するというモデルにおいてのものであるという分析結果が出されている。但しそのモデルを展開する場合にはその女性がある条件を満たしている必要があるというなかに、男性にとってチャンスがあるのだという話は前回氏に語って頂いたとおりである。

「極端にいえば、皆さんがパソコンのスキルに精通されていれば、キャラクターの立っている女性さえ探してくれば『黒子』としてビジネスを展開するチャンスがあるといえます。特にその女性がリアル店舗を運営しているならなおさらです。最近の事例で私達のグループがスカウトして始めた例があります。それは赤坂のバーなのですが、おでんを出すうえに、彼女自身本職は一応レースクイーンです。そこで『レースクイーンおでん』という切り口で展開してはどうかと。彼女はPCには詳しくないので、それをEコマースで販売してもよし、ブログを書いて集客してもよし、といったようにビジネス展開もできるわけなのです。

また、第2回目でお話しした水着と下着のサイトの話を聞いたときに『まだEコマースの業界ではビギナーズラックがあるのですね』という人がおり、私もそう思いましたが、これは間違っていると思います。どう間違っているかというと、それをビギナーズラックで終わらせないことが重要であるということなのです。その成功要因の分析を間違えないことが重要であり、結果として『成功の拡大再生産』をするためには経験に基づく広い視野から見られる人のアドバイスなどが必要なのです。そう考えると、皆さんにパソコンのスキルがなくても、そのような経験に基づいて成功の拡大再生産をしたいという人がいれば、その人をサポートするというチャンスがあると思います。」

 ビジネスをどうスタートするのかはもちろん、どのように展開、発展させていくかがさらなる課題ではあるが、その分析を間違ってしまわないようにすることが重要だと語る氏。前述の水着サイトのケースでも、氏が関わる中で導かれたものがあったという。

 「前述の水着サイトの女性に成功要因を「安いから」と分析したのを私は当初違うのではないかと思ったのですが、互いに話していく中で彼女がいうことはニュアンスが異なっていたという結論に達しました。つまりそれは「商品の価値に応じた値付け」が重要なのではないかということです。水着は店頭では通常8,000円、最低でも3,000円するものですが、その値段では着る水着しか買えない。でも1,500円なら一度しか着ないかもしれないけど買う、そのようなニーズに基づいた値付けこそが重要なのだということですね。それが正しい分析であると思っており、そこにこそビジネスチャンスがあると思います。

良例として原宿と銀座にあるアパレルの『フォーエバー21』があります。私がトレンドを追う仕事なので、メンズ中心に『ZARA』『H&M』『アバクロ』など全てチェックしますが、『フォーエバー21』の場合原宿と銀座で全く異なる商品構成で展開しています。そしてべらぼうに安い。これまではまず着ないだろう、と思っていてもその値段なら・・と思ってしまう値段なのです。『ユニクロ』も値段は安く品質も良いですが、オーソドックスなものばかりなので面白くないのですね(笑)。ぜひ一度『フォーエバー21』に行ってご自身が興味ある服の値段を見てみてください。おそらく驚かれると思います。」

あまりに驚異的な事例の数々に、表層的に見えるEコマースの実態における成功のカギがどこにあるのか、つい見誤りがちになるが、ビジネスとしての成功をどう続けていくかという観点において、Eコマースという特殊性に囚われないリアルなビジネスにおける経験や見識が重要であると語る氏。

しかしこれからのEコマースにおけるビジネスチャンスの創出は、女性が主導権を握っているという分析結果に少々複雑な思いがしないでもない。男性である私にとって、そのような女性をサポートできるだけの経験を積むことの重要性を心に強く印象付けられた氏の講演だった。

 (了)

敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

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