グローバル・テクノロジー・ネットワーク代表取締役社長 兼 新潟大学特任教授 和泉法夫氏 第3回「栄枯盛衰の歴史」(全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 6月 4th, 2011

DSCF0145「第3回 栄枯盛衰の歴史」

災害時のディザスター・リカバリ、危機管理対策は、経営にも置き換えて考えられる。
「想定外」という言葉では済ますことを許されない場面において、正確な情報のもと物事を判断する重要性を、氏は自身の研究テーマと併せ講演の前段として語った。
そして話は氏が自身のキャリアパスとして経験してきたIT業界の変遷を踏まえ、いよいよ講演の本題である「ITのゆくえ」へと入っていく。

「まずは私の半生と並行し世の中で起こってきた事象を並べた年表を見て頂きます。これは私が講演を依頼された際によく使うのですが、皆さんにも自身の人生を振り返る意味でも作ってみることをおすすめします。

1970年、学生運動が理由で閉鎖されていた上智大学で理工学部卒業後、文学部社会学科に学士入学して卒業したという変わり種です。都合のいいように文系と理系を使い分けていました(笑)。
その後IBMの経営哲学に惚れこんで社会人をスタートし、その後ベンチャーのタンデムコンピュータへ。その頃から12年間、合併され続けながらもずっと社長だった伝説の人 高柳 肇氏(氏の日本IBM時代からの先輩)との歩んだ後、日本SGIへと移ってきたのです。」

氏の語る「合併され続けた」という時期は、在籍したタンデムがまずコンパックに、そしてその後そのコンパックがDECに、というようなドラマチックな合併劇を経ていったその歴史をさしている。

特にDECとの合併の局面においては、買収した側でのリストラの強行などシビアな経験だった、と氏は語る。
そんな氏は、60歳を期にこの業界を退いて後は社会貢献に徹するのだという。

「それもお世話になったNECの金杉社長が御存命であれば、これは単なる逃げ口上にすぎないのですが(笑)。」

金杉社長とは、氏が日本SGIでNECと戦略的な大型提携を実現した当時のNEC社長 金杉明信氏(2006年逝去 享年65)のことである。
そんな氏は、自らの世代をこう語る。

「今私は団塊の世代として責任の重さを感じています。現在の菅首相も仙石氏も私と同年代ですが、私どもの世代は右肩上がりで育ってきた世代なのです。常に成長していく前提の時代でした。ですから良い思いだけしてきた世代だけに責任があります。(それにしても政治のリーダーたちの不甲斐無さが目立ちます)

9.11リーマンショック以降に金融資本主義が破滅し、成長神話が崩れ、新しい価値観の萌芽がみえてきた。しかし再びその成長幻想が復活する兆しの矢先の震災です。
今回は決定的に価値観が変わることになるでしょう。今日(講演当日4月26日)元ライブドアの堀江社長も実刑が確定したのも象徴的だなと感じます。」

「さておき。」

と氏は1997年に米ITジャーナリスト デビッド・モシュラ氏の著作「覇者の未来」に書かれた、1970年代から2030年に至るまでのロードマップを映し出した。そこには年代と並行し左から「システム中心」「PC中心」「ネットワーク中心」「コンテンツ中心」という4つの栄えては消えていく大きな波形が描かれている。

「私はこの業界を示す指針としてこの図をよく使いますが、ここに私のキャリアを照らし合わせて思い起こしてみると興味深いエピソードが見えてきます。

IBM時代にマイクロソフトが出てきたとき『あんな子供の道具が』くらいの認識でいましたが、そうではなかった。またその頃ネットワークのシスコが登場した時も『あれは配線屋でITなんかじゃない。』といっていたらそうではなかったと。固定電話全盛時代の携帯にしてもそうで、ここまで携帯がここまで栄えるとは誰も想像しなかったのです。

このように見てみると、今現在はグーグル全盛ですが、奢ってしまうとフェイスブックに逆転されるかもしれない。もうすでにいいところまできていると思います。つまり私がいいたいのは、まさに渦中にいると周りが見えないということをお伝えしたかったのです。
ですから皆さんが今夢中になっていろいろ動いている中で、次代への萌芽というのが起こっている可能性があるということなのです。
言い換えると皆さんにもチャンスがあるということです。」

IT業界をこのように振り返って俯瞰したうえで、氏はこうも述べた。

「この業界は今まで『集中と分散』を繰り返してきた歴史です。私がIBMで扱っていた汎用機から始まり、その後80年代のクライアント・サーバの時代、その後ウェブのアプリケーションが進化し、現在は次世代の集中型Saas、今ではクラウドというように変わってきていますが、技術的なことだけでなく、その流れの中で多くの企業が買収・合併を繰り返してきている歴史なのですね。
このような事象は、どの業界においても存在することかと思いますが、栄枯盛衰の象徴としてこの写真をお見せします。」

そういって氏は日本SGI時代の1枚の写真を見せてくれた。

「この写真はカリフォルニア シリコンバレーのマウンテン・ビューにあるSGIの本社で2003年に撮影されたものですが、この建物は現在グーグルの本社社屋です。

これを見ると昔タンデムコンピュータの社長だったジム・トレビック氏と六本木を車で走っていた際に、私が大きな日本IBMの本社ビルを指差して『俺は近いうちにあのビルを日本タンデムの本社にしてみせる!』といいながら、トレビック社長が嬉しそうに握手してきたことを思い出し、グーグルの社長も同じような思いでSGIの本社に移ったのではないかと思いをはせるのです。

当時のSGIは今のグーグルの勢いどころではないくらい栄えていて、一時シリコンバレーの大地主というくらいに土地を買い占めていた時期もあったのです。

最後には全て売り払ってしまいましたが、この写真に象徴されるように、世の中は常に動いてきているということなのですね。」

諸行無常、栄枯盛衰。

まさにその言葉に象徴されるようなこの写真を見ながら、氏が語る「新しい価値観の時代」に対し、次代の経営者はどのような方向性を目指していくべきなのだろうか。

またIT業界はどこに向かうのか。次回の最終回はこれからの次代を担う経営者にむけたアドバイスを頂きたいと思う。

新潟大学 脳研究所 URL: http://www.bri.niigata-u.ac.jp/

(取材・執筆 柳澤 史樹)

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