グローバル・テクノロジー・ネットワーク代表取締役社長 兼 新潟大学特任教授 和泉法夫氏 最終回「そしてこれからのベンチャーはどこへ」(全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 6月 10th, 2011

最終回「そしてこれからのベンチャーはどこへ」

ITのメインストリームを自らのキャリアとして歩いた和泉氏。自らが日本の代表となったシリコングラフィックスが、現グーグルが遠く及ばないほどの栄光の時期を迎えていた模様を、当時の写真を交えて語ってくれた。 しかし氏は栄枯盛衰の歴史を見てきたその目で、次代のビジネスモデルの出現を予言する。

「いまベンチャー企業の代表をしている方がいらっしゃると思いますが、今後の展望として、ベンチャーキャピタルの力を得て会社を大きくし売却することによって大金を得て引退するといった、いうなればホリエモンや村上ファンドに代表されるような旧来の発想をお持ちの方はかなり危険だ、とお伝えしておきます。

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むしろ「なぜ起業するのか」というところに立ちかえると、これからのベンチャーは「社会起業家」のモデルが大きくなる可能性を秘めているのだと感じます。

かつてのソニーやパナソニックにしても昔は町工場から始まって大きくなってきた。
これらの会社は当初社会貢献は当たり前のように社是の底に秘められたものであったと思うのですが、規模が大きくなって資本主義の仕組みの中に入ると窮屈になり、形式ばったCSR活動という程度のものになってしまっているのが現実です。

そこでまず、混乱しつつも大きなチャンスだと私が思うこの時期に即した「企業のビジョン」が、ベンチャーとして再び重要視されてくると思っています。
そしてそれは必ず「社会性」をもったものでなければならない。いままさに東北の被災地を復興させる、そのようなときこそベンチャーの出番ですが、「金儲け」を考えている人間ははじかれてしまうのではないかとも思います。

かつこれからは資本主義の中で見えぬ株主にモノを言わせず、じっくりと腰を据えて「持続性」をもって事業を運営していくことが本当に重要だと思います。そのために上場がベストな道か、という問いに対して私ははなはだ疑問だと思わざるを得ません。

日本古来の長く続く老舗で「200年企業」といわれるようなモデルは、いわゆる適正な利益、適正な成長をキープし続ける持続性があるからというのもうなづけます。
上場したから時価総額がいくらで、収益性がどれくらいで、というようなモデルはこれからの次代、長続きしない気がするのです。
そこにかける人がいてももちろん否定はしませんし、それはそれでいいと思います。
しかし次代のマジョリティはアメリカをはじめ移ってきているわけです。ではどうするか、それをこれからお話ししましょう。」

「ビジョン」「社会貢献」、そして「持続性」。このキーワードがこれからのベンチャー企業に求められているのではないかと氏は語る。

確かに震災後の人々の価値観などや経済も含め新しい局面を迎えている我々にとっては、新しいキーワードが必要なのかもしれない。
ではそのキーワードに基づいた、具体的なポイントこそが重要であるが、そこに対するアドバイスも含め、氏はさらに言葉をつづけた。

「ポイントとしては4つ。

1つはVCではなく事業者と相互メリットを活かした提携。VCのモデルは収益がないと許されないですが、事業者であればそのような提携が可能になります。
2つめにNPO的資金調達という手段。ただし社会貢献としてのスタンスが必要。
3つめが経費・人件費の抑制。例えばドイツなどで会社を作る際には、全部のセクションがそれぞれ独立したプロフェッショナルであることがあります。財務のプロが他の仕事もしながらCFO(最高財務責任者)の肩書をもっていたりするのです。俗にいうマルチジョブシステムですね。

そして最後にベンチャーの人が持たねばならないものが「ブランド」です。私が支援している2つの企業は海外ブランドとの提携ですが、信用を持つ為に「ブランド」はかなり大きな効果があるというものです。

ここまでお話ししてきましたが、私が今日皆さんに最も伝えたかったのは、『価値観が変わっているポイントを見誤らないほうがよい』ということです。これは私自身が「現場」を離れたからこそ自らが感じれることであり、お伝えしたいというところなのです。」

日本は旧来の金融市場主義の歴史を経て、まさに新しいポジションに立つことを求められている。
そしてそれは皮肉な話ではあるが今回の震災によって気がつかされた事実でもあるのだ。
すべてが変革するそのとき、自らをどうかじ取りしていくべきなのか。長年の経験に基づいた言葉の説得力に思わず身が引き締まる。
それは我々日本人がまさに「次代」にむけてどう歩くかという「道しるべ」たる言葉である。
氏の力強い声を聞きながら、そんなことを感じた講演だった。

新潟大学 脳研究所 URL: http://www.bri.niigata-u.ac.jp/

(取材・執筆 柳澤 史樹)

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