SAMURAISHIP.COM 代表 公認会計士 出縄良人氏 最終回「日本ブランドのビジネス化」 (全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 7月 31st, 2011

日本企業の海外向け情報発信ポータルサイトSAMURAISHIP.COM (http://www.samuraiship.com/) で日本企業の海外進出を後押しするビジネスを進めている出縄氏。

氏の話しを聞けば聞くほど日本の企業、特に中小企業がその企業価値、事業価値を理解し、戦略的な情報開示を行うことで得られるチャンスの大きさ、可能性を感じる。しかしそれが自明の理であるにもかかわらず、その仕組みが整備されていなかった事実に関しても驚きをかくせない。
さて、今回はその仕組みとして本格的な展開を仕掛けるSAMURAISHIPに関して、さらに深くお聞きしてみたい。

最終回「日本ブランドのビジネス化」

「前回はSAMURAISHIPのサービスの概要をお話ししました。
SAMURAISHIPによる情報発信は、上場企業を主な対象とするMain Boardと中小企業向けSME Boardの2つがあります。

現在は、Main Boardのみで仮オープンした状態ですが、Main Boardの登録企業数を300社まで増やしたところで、正式オープンします。そしてメールメンバーとして登録した海外のユーザー数が5万人程度に達したところで、中小企業向けのサービスを開始します。中小企業はSME Boardへの登録の他、上場企業に準じて英文財務諸表の付いたAnnual Report等の開示を行うことによって、Main Boardに登録することもできます。

中小企業のSAMURAISHIP 登録にあたっては、製品又はサービスとそれを支える技術・ノウハウの審査を行います。審査のポイントは、海外企業にとって戦略パートナーとして魅力がある企業か否か。優れた製品を世界に供給してきた日本の一流メーカー。その品質を支えているのは多くの日本の中小企業です。その技術力とノウハウを生かし、今や中小企業が自ら世界に羽ばたく時なのです。それができる企業こそが生き残り、日本経済の新たな成長を築くに違いありません。

SAMURAISHIPでは出縄&カンパニー(http://www.denawa.com/ )の有する専門家ネットワークを生かして、このような中小企業の海外パートナー戦略を前提とした事業計画の作成もサポートします。その事業計画を達成するために最適の戦略パートナーを探すべくSAMURAISHIPでメッセージして行きます。繰り返しになりますが、海外、特にアジアの企業や投資家にとって日本は憧れの国です。そもそも日本という高いブランド力を持っている日本の中小企業は、アジア諸国で上場している現地の大企業と対等な関係作りができる可能性があるのです。

ここまでSAMURAISHIPの機能、サービスをざっとご説明しましたが、もう少し「日本のブランド力」に対して考えてみたいと思います。

私の友人にバングラデシュの縫製会社の経営者がいます。その友人に『もし君の会社の製品にメイドインジャパンの表示が付けられるとしたらどう?』と聞くと即座に『素晴らしい。それなら絶対に売れる』というのです。当たり前ですよね。お話ししたように『メイドインジャパン』は既にブランドになっているのですから。しかし残念ことにそれは無理。バングラデシュで製造されたものは『メイドインバングラデシュ』であって、『メイドインジャパン』にはならないのは明らかです。

そこで、メイドインジャパンに準ずるものとして、メイドインジャパンと同等の水準にあることを日本が公に認めるという制度『メイドインジャパン認証』というものを考えてみました。そういう制度があったらどうかと聞くと、経営者は『そんな制度があるんだったらぜひ認証を受けたい』と言うんですね。確かに現地では『メイドインジャパン認証』を受けている製品の方が、そうでない製品よりも高く評価されるのは明らかでしょう。

一方、JASDAQに上場しているある食品メーカー。700億円ほどの売上の97%は国内向け。株主は皆日本の投資家で英文開示はこれまで必要ありませんでした。学校給食向けに高いシェアを持ち、経営は安定していますが、少子化が進む環境下で、事業はじり貧です。そこで、成長市場である中国・アジアへ進出すべく、海外戦略の第一歩として英文開示を社長に勧めたところ、『英文開示なんかしたら、外国から電話がかかって来ちゃうよ。どうするの?』などと言います。海外進出のコストも気になるようです。実は、上場企業であっても、まだまだこのように心は鎖国状態の社長は少なくないのです。

最近、このような会社に私がお話ししているのは『ディズニーランドモデル』です。ディズニーは東京に巨大な遊園地をつくりましたが、あの遊園地にウォルトディズニーは1銭もお金をかけていない。それだけではありません。遊園地を作った途端に大きな売上が上がったのです。そうです。東京ディズニーランドの設計から設備、運営ノウハウや教育システム等の一切をオリエンタルランドに売ったんですね。しかも、その後、お客さんが入れば継続的に一定の割合の収益が入り続ける仕組み。凄いですね。全くのノンリスク・ノンコスト。フランチャイズの仕組みに近いわけですが、このようなモデルが可能となる要件は3つ。『ブランド』、『ノウハウ』それに『実績』です。

先の食品会社は、厳しい日本の食品衛生基準を満たす優れた品質管理・衛生管理のノウハウと実績を持ちますが、会社としてのブランド力はもう一歩です。しかし、実は世界、特に中国・アジアでは『日本の食』というブランドを持っていることに気づくべきなのです。ということは、すでにディズニーランドモデルを海外で実践できる3つの要件を満たしていることになります。

海外に工場を建設して事業を広げようとする場合、多くの日本企業は、これまでコストとリスクを背負って海外進出をしてきました。海外パートナーと事業を進める際にも多くは海外企業とのジョイントベンチャー。投資が伴います。

一方、ディズニーランドモデルでは、工場を作った途端に逆に売上が上がる。工場の設計、機械設備、コンピューターシステム、物流システムを提供するほか、生産管理や品質管理のノウハウ、従業員の教育制度の指導など、全てが売上になるわけです。さらに工場の生産高に応じて一定割合をロイヤリティとして継続して支払ってもらう。つまり、東京ディズニーランドにおけるオリエンタルランドの役割を担ってくれるパートナーを探すことで、中週企業でもコストの負担なく海外進出が可能になるはずです。

ここに、『メイドインジャパン認証』も生きてきます。経済産業省が管轄して『メイドインジャパン認証機構』なる組織をつくり、この組織がメイドインジャパン認証機関として中小企業を含む日本企業を認定します。日本企業は認証機関として、海外パートナー企業のメイドインジャパン認証を進めることで、海外事業を展開するシナリオです。認証制度のビジネスモデルとしては、品質管理や環境基準等を定めたISOが有名です。収益の源泉は指導と監査です。これと同じビジネスモデルをメイドインジャパン認証にも応用することで、多くの企業が海外から継続して収益を獲得できるはずです。

しかし、こんなことを言うと、すぐ日本の技術が海外に流出するとか、日本の製造業が空洞化すると反対する人が出てきます。しかし、そんなことを言っていては、日本の製造業は本当に自滅してしまうのです。もはや韓国や台湾、そして中国は独自の技術でも日本を追い越そうと凄い勢いで迫っています。コスト競争力では日本は勝てません。こうなると技術を国内に留めようとすることに無理があるのです。今や、日本の持つ技術を積極的に海外に移植し、それによって新たな付加価値を実現していくことこそが生きる道というのが私の考えです。

実は、ディズニーランドモデルで海外に技術を移植して生産を海外にシフトしつつ、国内空洞化を防ぐ良い方法があります。

25年前。私が監査法人に入って初めの頃、監査のために訪問した会社の一つに厚木ナイロンという会社がありました。ご婦人の皆さんはご存知のとおり、ストッキングを作っている会社です。本社は海老名にあります。私が初めてということもあって、会社の方がご親切に本社工場をご案内してくれました。ところが、その工場が動いていないんです。不思議に思って会社の方に理由を聞くと『この工場は昔は生産をしていましたが、今はやっていません。生産は全て衛星工場でやっているんです。』との回答です。

『衛星工場』という言葉がとても新鮮でしたが、どうやら全国各地にある提携工場のようです。基本的には資本関係はなく、厚木ナイロンが生産設備とノウハウを供与して、加工を委託している工場です。まさに『ディズニーランドモデル』だったのです。では今の本社工場は何をやっているのだろう?と思って聞くと、『本社工場は専ら新製品開発と衛生工場の研修を担っています。・・・』

この厚木ナイロンの仕組みを海外進出に応用すれば、日本国内の工場は世界の提携先工場の研修の場として生きるとともに、常に新製品と新技術を開発し続ける最先端の工場として位置づけることができるはずです。メイドインジャパン認証基準においては、必須の条件として、日本の認定工場における一定期間の研修を義務づけます。日本には世界中から多くの人が研修のために集まって来る。製品開発、試作品製造、研修のインストラクターとして日本国内の雇用が確保できるとともに、海外からの研修生が日本でどんどん消費をしていただけば、国内マーケットも勢いを取り戻すことでしょう。

ディズニーランドモデルとメイドインジャパン認証機構。海外研修生の研修と新製品開発に特化した国内工場の仕組みによって、日本のものづくりは生き延びることができる、またこのビジネスモデルで日本はこの先長く食べていける!と思っています。そしてその第一歩となるのがSAMURAISHIP。優れた日本企業を海外に伝える役割を担うべく、日夜頑張っていきたいと思っています。」

高度経済成長期から現在に至るまでつくりあげてきた日本製品の高いクオリティが、海外に評価され、それが結果として『日本』というブランドになった。

そのブランドをいま改めて見直し、グローバル化社会に向けた日本企業の挑戦をサポートするSAMURAISHIPには、日本の誇るものづくりの価値を具現化するシステムが組み込まれている。

日本企業が今後必然として避けられないグローバル化の船出に際し、SAMRAISHIPの心強いかじ取りを期待したい。

SAMURAISHIP.COM    http://www.samuraiship.com/

(了)

(取材・執筆 柳澤 史樹)

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