第34回次代の会 元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏 第1回「今あえて読み解く”FREE”」

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 9月 16th, 2011

前回より約3カ月間を経て開催された第34回次代の会にご登壇頂いたのは、玩具メーカー大手「タカラ」の元代表取締役社長である佐藤博久氏。
昨年7月に、Eコマースについて興味深い成功事例を挙げながら、その可能性に関して多くのアドバイスを頂いたが、今回は氏自らお話しする機会として次代の会を選んでいただくという名誉なお声掛けのもと、開催されることとなった。

次代の会発足から約4年目。佐藤氏のように大きな実績を残してきた経営者の方々が、自らの考えを発信する場所としてこの場所を選んでいただけるまでになったことに感慨ひとしおである。

そんな氏が、今回のテーマに選ばれたのは「FREE<無料>は、さらに、全ての業界の全てのステージへ」。2009年に発刊され、これからのビジネスにおける概念を謳った書として大きな反響を呼んだクリス・アンダーソン氏著「FREE」をテキストに、そのビジネスモデルの是非を検証する。
リアリティのある事象に基づいた氏の分析が楽しみだ。

第1回「今あえて読み解く”FREE”」

「きっかけは半年ほど前に気がついた『モバゲー』と『Gree』(どちらも携帯ゲームサイト)の大成功の話しを聞いたことでした。それまでの私の常識からすればありえない事例がある。『タダ(FREE)といっていながら大ヒットゲームによっては月間数十億の売上がある、ということなのです。そこで調べてみると世の中には数々の『FREE』なビジネスモデルの事例があることに気づいたのです。

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏。1年ぶりのご登壇だが

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏。1年ぶりのご登壇

2009年に発刊された『FREE』は、アメリカの事例に基づく分析なので、正直なところそれだけでは非常に分かりにくかった。その翌年2010年には日本でも多くの『アンサー(解説)本』が発刊されました。しかしそれらの本も、分析・分類を間違っていたり、あるいはまた1年経過して再分析してみるとまた見方を変えなくてはいけないような事例も多く出てきていると実感しました。

そこで私は今の段階での私の考えを聞いて頂き、検証したうえで意見を交換し、昨年と同じようにご縁があれば一緒にお付き合いが出来ればいいなと思っています。(氏は、昨年のご登壇をきっかけに6社からの声掛けの後、3社とビジネスパートナーとしての仕事を継続されている)

しかし、今日私がお話しすることはまだ誰も到達したことのない領域なので、どうすれば上手くいきますか、という問いに答えられるものではありません。
今回のこの検証は、どちらかといえば今現在安定した収益源を確保している会社よりも、むしろ今、これから何とかしなければいけない、と思っている方々に対して何かのヒントになるかと思っています。」

確かに2009年に発刊の「FREE」は、概念は理解できても、それをどうマネタイズするのか、というところにおいて明確な回答やスキームの提示はなかったと思う。
しかし今回の氏いわく、2年を経過した今こそ、その概念をしっかりと咀嚼したかたちで検証できるのではないかという。現実の社会で展開される幾多の「FREE」モデルが列挙されていたスライドを前に氏は語る。

「読まれた皆さんの中には、このモデルはウェブの世界であり、リアルでは関係ないんじゃないか、という方もいらっしゃるかと思いますが、私自身はもともとウェブ・ビジネスの中で生きてきたわけではなく、リアルビジネスの世界で生きてきた人間で、だからこそこのモデルに興味を持ったのです。

皆さんに今日私が問いかけたいところは、『御社はなぜお金をもらえているのか、お客様は何にお金を払ってくださるのか』ということの再検証だと思っています。このことを通して事業の再定義していかないと、これからの時代に生き残っていくことが非常に困難だと思うのです。

皆さんの中に『扱っている商品の値段を半分に下げてもクライアントが増えない、売上が変わりません』ということであれば、今日の話しは関係ないと思います。また、1円の値引きも取引先から言われたことがない方も同様です。

しかしそうでない方にしてみれば、これはまさに『FREE』のモデルに時代が向かっていることを認識すべきですし、そうであれば商品が0円になっても生き残れる会社になるためにはどうするべきか、今から準備しておく必要があるのではないか、と言うことなのです。」

値付けが与える商取引への影響は、私が考える限りほとんど全ての業種において最も大きな要素だと思うのだが、それが今限りなく「FREE」を前提としたものへと変化しているという。
そこで我々が来る「FREE」時代に対してどういった意識のもと、どのような備えをしておくべきなのか。

久しぶりの次代の会に定員の40人を超える人が集まった

久しぶりの次代の会に定員の40人を超える人が集まった

「本の中に出ていた事例で、三越にも出店している高級おかき屋さんが、来店した方にタダでおかきを出している事例や、つまみ2品で焼酎飲み放題という居酒屋さんの例が載っています。またグーグルアースも莫大な開発費がかかっているにも関わらずその使用料はご存知の通りタダですね。

ここで考えられることは、この時代、皆さんがいいものを作れば作るほど、皆さんの競合も限りなくタダに近づけてくる可能性がある、言いかえれば『いい商品を売ることだけによる課金窓口だけでは生き残っていけないのではないか』ということなのです。」

氏が講演の冒頭においてポイントとして示唆したのは、FREE、すなわちタダが主流になってきた現代において「課金窓口の多様化の必要性」であった。製造業における技術力で長く日本社会に根付いていた「いいものだから売れる」、つまり生産者からみた「プロダクトアウト」の概念を根底から覆す投げかけである。
氏は、リアルビジネスの場におけるプロダクトアウト的な発想と、ウェブ上でのマーケティング概念という2つの考え方を網羅している。その観点から、このFREE時代に対する双方の考え方をどう融合させるべきか、興味深いアドバイスを示唆してくれた。

「これからの時代、ものづくりのプロとウェブのプロが過去の経験に基づいた考えのなかで接点を見つけていく、という旧来のモデルはもう通用しないのではないかと考えます。それはそれぞれの常識から抜けられないからですね。

プロ同士が話すのだからその接点で出たものは間違いない、ということではなく、双方の考え方、言い分を俯瞰してみるようなプロフェッショナルなチームがこれからは必要になるのだ、ということなのです。これらを前提にふまえ、ウェブサイトをどう活かしていくか、次回に渡りお伝えしようと考えています。」

前回ご登壇頂いた時もそうだったが、ウェブ、IT関係者が多い「次代の会」参加者に対し、導入からリアリティのある実例に基づく氏のトークに、皆の集中力が一気に高まるのがひしひしと感じられた。FREE時代を迎えるにあたっての興味深い投げかけとアドバイス。次回も引き続きレポートしていきたい。

(第2回に続く)
敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

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