第34回次代の会 元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏 第2回「究極の正常進化」(全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 9月 23rd, 2011

前回より掲載を開始した第34回次代の会玩具メーカー大手「タカラ」の元代表取締役社長である佐藤博久氏による「FREE<無料>は、さらに、全ての業界の全てのステージへ」。
リアリティのある事象に基づいた氏の非常に興味深い分析による、今後のビジネスモデルにおけるFREE(無料)戦略をどう考えていくべきか、そのセッションの2回目となる。前置きはこれぐらいにして、さっそく氏の言葉から入ってみよう。

「先日はFREEのモデルにおいて、課金窓口の多様化、そしてマーケットイン、プロダクトアウトの概念を俯瞰する融合の重要性をお話ししました。
ではその実証モデルとしてウェブサイトがどういう役割を果たしているのかをご説明しましょう。

ちょうど今日は3社のウェブ関連企業の方とお話ししてきました。まず最初の1社、私が創業当時からサポートしている、ウェブのユーザビリティで日本トップクラスのビービットhttp://www.bebit.co.jp/ です。話しをしたなかで認識したのは、ウェブサイトが企業によってはさらに細分化されてきているということですね。例えばビールメーカーを例にとると、そのビール会社のAというビールのブランドごとにサイトを立て、さらにキャンペーンのためのウェブページといったように細かくターゲットを絞り込んだものになっています。

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏。1年ぶりのご登壇だが

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏

また、サイバードhttp://www.cybird.co.jp/ 社と組んで7月にサービスイン予定だったAKBの前田敦子さん・大島優子さんのiphoneアプリですが、実はサービスインが1カ月半ほど遅れました。

なぜか。これはもともと無料アプリとして準備をしたのですが、これを出す3週間ほど前に同じようなAKBアプリをサービスインしたところ、簡単にいえば『炎上』を招きました。

なぜか。

それはこのアプリが『無料』だったからなのです。
その結果、急きょこの前田敦子さん・大島優子さんのアプリが600円の課金制にしなくてはならないということになり、再審査の結果遅れてしまったのです。

今考えると、この課金制にしたことにより、ダウンロード数には大きな影響があったと思います。無料がいかに強いのか、を実感することになりました。」

前回もそうだったが、氏の話が説得力と驚きをもって伝わるのは、やはり数値データによる裏付け、そしてその規模の大きさが印象的だろうと改めて思った。
いかに自分の考えている以外のところに大きなマーケットが潜んでいるのか、それはこのFREEというキーワードに基づいたビジネスモデルで図れることになった。

「しかし、タダ(FREE)にすること自体が目的ではないところから考えねばなりません。
そのことに関していえば、おそらく、リアルなビジネスの現場で今まで『いいものを作って売ってきた』企業にとって『マネタイズ』という概念は無かったのだと思います。それに対しIT系の方と話すと『これをどうマネタイズするか』という話をよく聞きます。

つまり私がいいたいのは、これからの時代において『どんなに素晴らしいモノやサービスを提供しても、その価格はゼロに向かっていくので、作るだけでなく、その先に『マネタイズ』できるアイデアがないと、結局は生き残れない、ということなのです。

最初に述べたモバゲー、Greeを例に挙げますと、実際お金をあそこで払っている人は1%ほどしかいないんです。では99%の人が満足していないかというとそうではないんですね。90%の人が満足している。

ということは『90%の人にはお金を要りません、どうぞ無料で楽しんでください。残りの1%の人がお金を払ってもらえる仕組みをもっていますから。』ということなのですね。
その結果彼らは20万人から月15,000円を徴収すると、月30億円のビジネスになることになります。
でも20万人になるのは2000万人にタダで遊ばせているからです。これがもし100円でも最初から課金していたら、どれほどの人が遊び始めるでしょうか。」

モバイルのゲーム市場における2つの巨星のビジネスモデルを挙げ、無料の先にある強固なマーケット戦略における『マネタイズ』の重要性に触れた氏は、この一連のFREEという時代の潮流に対してこう語った。

「私はある意味このFREEという潮流は 『究極の正常進化』のかたちだと思っています。
それはなぜかといいますと、前述のモバゲー、グリーの例でも、タダでさんざん遊べるので、悪いものには1円も払ってもらえない。言い換えれば絶対にいい商品・サービスだけしか生き残れない、ということです。

また、消費者にとってシンプルに『得』です。それは当り前ですよね。タダで好きなだけ遊べるだけ遊べてしまうわけですから。
消費者にとって得で、かついいものが残る。そしていいものをつくるところしか生き残れない。これは正常進化であることには間違いありません。

これが例えばデパ地下や化粧品などの無料サンプルは時間も場所も数も限定されています。ゲームの場合は、いつでも都合の良いときに、思う存分タダで遊べるものになっているのです。そう考えると、ウェブのもつ正常進化の度合いがお変りになるかと思います。

そのほか、中国やブラジルなどの新興国の音楽マーケットにおいて、タダでミュージシャンが自分達の音楽をどんどん配信し、その結果ファンができ、結果ライブに大観衆を集客させる音楽ビジネスの成功例などは、まさにこのFREEの概念で成功してきている象徴的なものです。
これは従来レコード会社という既得権益があった欧米型の音楽ビジネスモデルに対する新たな考え方として、いいものをつくる立場であるミュージシャンにとってもファンである消費者にとっても、望ましい本来のかたちなのではないか、と思っているのです。」

「正常進化」

氏はそのような言葉でFreeというビジネスモデルを、新興国のミュージックビジネスを好事例として挙げながら語ってくれた。今までの既得権益を打ち壊し、生産者かつ消費者の双方にとって優良なモノだけが残るというモデルは、これからの時代にさらに加速をすることが推測される。

次回、この理想的に見えるFreeモデルを、分析、検証し、6つに分類した定義付けしてお話し頂けるという。どのような定義のもとにこのモデルは展開していくのか。氏の市場の事実に基づく分析、定義付けだけに、説得力のあるお話しになることは間違いない。次回も楽しみにそのお話しを伺うとしよう。

(第3回に続く)
敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

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