第34回次代の会 元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏 最終回「FREEへのチャレンジ」(全4回)

By fumiki.yanagisawa@jidainokai.jp • 10月 7th, 2011

最終回「Free へのチャレンジ」

第34回次代の会 玩具メーカー大手「タカラ」の元代表取締役社長 佐藤博久氏による講演「FREE<無料>は、さらに、全ての業界の全てのステージへ」もいよいよ最終回。
FREE(無料)戦略における7つのカテゴリーについてまとめて頂いているが、前半お話し頂いた4つを簡単にまとめてみた。

1つ目は「いいものだから売れるだろう」という楽観的な見地からの「Free」。
2つ目は「コストを分散、迂回して見えなくすることで作り出す「Free」。
3つ目はデジタルコンテンツの市場における「フリーミアム」という概念。
4つ目はそれらを踏まえたうえでリアルビジネスでも展開される「Free」。これを成功させるカギとなるのは「ホームページ」の活用。
その前段を踏まえ、氏は残る3つの概念に関して説明を続ける。

「前半の4つに引き続き、5つめにお話ししたいのは 『非貨幣市場』という概念。

今、ウェブは評判と関心を求めて『アマ』と『プロ』がしのぎ合う共有市場であるということを認識する必要があるということです。これは全くお金とは関係なく、評判と関心を得る為にものすごいエネルギーが発生している『市場』であるということなんですね。

象徴的な「コンビニと傘」という話しを知っていますか?ある女の子が雨を降った時にちょっと傘を失敬した事実をネットに掲載したことをきっかけに、それは犯罪だという一団に名前を始め学校から何から調べ上げられたあげく、その子の友達の人気投票までが行われているというネットで話題になった事件です。

同じようなケースで、たまたまアディダスに新入社員で勤めていた女の子が会ったJリーガーの選手がかっこよくないということを書いたことで炎上、その子は辞めました。

これらの例を見るように、ウェブのもつ情報の持つ力はあるということなので、その力をどう使うか、ということなのだと思います。
6つ目は『第三の価格→無料以下』という概念です。
家電量販店ヤマダ電機の例にあるように『来るだけでポイントが付く』という仕組みを考えているところもすでにたくさんあるということが分かります。タダよりもお得な価値づけをしているわけですね。しかしそれは単純ではなく、緻密に計算された戦略があるということがあげられます。

ただし、タダ以下なら魅力的かと言うと必ずしもそうとは限りません。

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏。1年ぶりのご登壇だが

元タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤博久氏

分かりやすい例としてクックパッドと楽天レシピの例を挙げられます。この2つのサイト、冷静に分析すれば機能的には楽天レシピのほうが実際にはいいわけですが、圧倒的にクックパッドのほうがファンが多いです。しかもクックパッドの場合、1部の『カリスマ』がファンをつくってどこかへ行ってしまうリスクを避けるために、特定のカリスマをつくらない仕組みを意図的に作っているということに勝因があるといえます。

要するにただフリーにしているのではなく、タダにしているなかでどうやってファン化するのか、どうやってマネタイズするのか、というところがしっかり考え抜かれているということなのですね。

ジレットの替え刃の例。ジレットの商品がよければジレットの替え刃を買うことでビジネスが成立しているという例があります。これはFREEにも書いてありましたが、あるアンサー本で『もし競合が替え刃をタダにしたら、ジレットはシェービングフォームを売るでしょう』というのがありました。

スーパーの卵の例も分かりやすい例ですね。おそらく皆さんは卵があれだけ原価が安いとは正直思っていないと思うんです。スーパーにしてみれば卵で稼ぐ必要がないからあれだけ安い値段で売っているんですね。そう考えると早晩卵もタダになっていくということですね。
今までのビジネスの常識から、良い商品だから売れる、というものにしがみつく幻想は非常に危険であるといえます。競合にとってみればその商品をタダにすることで、他で利益を出す仕組みをもっていればそこに消費者が流れていってしまうからです。

そして最後に7つ目として現代は「超消費者の時代」であるというお話しをさせてください。

前述の例を検証してお分かりになるかと思いますが、よくできているタダ、そうではないタダをよく見極める必要があります。
前述したおかき屋さんの例がいい例で、実際にそのおかき屋さんはタダのサービススペースを閉鎖しました。結局消費者である我々は美味しいということがわかったからと言って、おかきを買おうとは思わない。タダでいいものをもらえたらラッキーだと思っているのが消費者なのです。

何が利益を生み出しているのか、そしてそれをタダで出す場合どこでお金を稼ぐのか、というところを考え直さねばなりません。原価があるからと言うことに縛られていたら、その商品が競合他社に狙われた場合、非常にこれも危険だということになるのです。しかもそれは新しいものは何も生み出さないですね。

これまで4回に渡り「Free」に関してお話ししてきました。総括すると、よほどの好景気にすぐならない限り、全てのサービスや商品がタダになっていく傾向は避けられないと思います。価格は暴走する!からです。ですから、今のうちにどんどんトライし、違ったならまたそれを修正していく以外、手はないと思うのです。しかし、その流れのなかで良いものしか残らないことは間違いありません。

小説を99%ただで読ませて、最後の1%を読みたければお金を払ってください、というサービスがあります。殆どの人が1円も払わないにも関わらず、ビジネスとして成り立っています。価値があると思うものにはお金を払う人がいる反面、いいものしか残らないということの証明だと思います。おもしろくなければ残り99%の人も読みませんからね。

1円とタダ、0円の違いを1円と思うか、1000円と999円の違いを1円と思うか、そう考えると0円の価値のいうのはやはり特別な価値があるのだ、というところだと思います。

今後このような0円 タダの可能性について実験をしてみたいと考えている企業の方をお手伝いすることで、何かしらチャレンジができれば、そのお手伝いには喜んで参加させて頂きたいと思っています。
私のほうから出向いてお話しをお伺いさせて頂きますので、ぜひご連絡ください。お待ちしています。」

そういって氏は講演を締めくくった。
新しいFree、タダの概念に基づいたマーケティング手法は、まだまだ未知数であり、チャレンジであると語る佐藤氏。それは時代の避けられない潮流であるが、その中に次代のビジネスにおける大きなチャンスも潜んでおり、しかもそれは大企業よりも中小企業にあるという。

従来のマーケティング手法において過去のものになりつつある「いいものだから売れる」すなわちプロダクトアウトの概念を乗り越え、Freeという新たな概念のもとにチャレンジをする分岐点にある昨今において、氏の言葉は今回参加した次代の会のメンバーには大きな励みになったことは間違いない。

新たなFreeビジネスのサクセスモデルを、今から大きな楽しみをもって待ってみようと思う。

(了)

敬称略 取材・執筆 柳澤史樹

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